ASRock Steel LegendとFractal Design Meshify 2 XLで作る、準廃エンドNASサーバーの話(自作パーツ編)

総容量84.5TiBとか何に使うんですかね。

あとすみません。長くなりすぎたので前後編です。パーツ構成だけみたい方は最後のほうに表でまとまってるので参考にしてください。

Google Drive(G Suite)が死ぬので……

ことの発端は2020年9月のニュース。G SuiteがGoogle WorkspaceになってGoogle Driveの容量無制限が終了予定という衝撃的なお話でした。

70TBくらい使ってるぞ私……ということで、必要になったためにNASサーバーを用意することになりました。Google Drive他すべてを契約したとして、とても高額なサブスクリプションになってしまい、月に1台6TBのHDDが買えるどころの騒ぎではないためですね(30TBのGoogle Driveは月に3台6TBのHDDが買えます)。

NASというのがわからない人はググっておいてください。有益なので覚えていて良いと思うので。

どんなNASにするか

まず開幕早々既製品のNAS装置はスルーしました。RAIDを使うことを前提としているのにも関わらず、RAIDが飛ぶと大変痛い目に会うためですね。ハードウェアRAIDは一般人が手を出して良い世界ではありません。うっかりすると70TBが吹っ飛んで再起不能になります。○NAPさんのNASを大学時代に研究室でいきなり導入して数ヶ月でデータが吹っ飛びかけて英語のサポートセンターとやりあってなんとかシステムを復旧させるとかいう拷問があったので信用していないというのもありますね。

ところで、我が家には4TBのHDDを9本、RAID-Z2(実質RAID6:2台までHDDが死んでも復旧可能)で構成したFreeNASがあります。こいつの性能が中々よく、今まで4台のHDDを寿命前交換(HDDをローテーションすることで同時破損リスクを下げる行為)していますが未だに問題が一切発生していないのです。

ということでFreeNASを信用することにし、最新のTrueNAS Core(改名)を導入することにします。当然ながらHDDの搭載量はケースとSATAの本数に概ね依存することになるわけです。まずはケースをなんとかしなければなりません。

ケースを見つける

近年ケースはどんどん3.5インチベイを削減していっており、HDDが1台しか搭載できないとかいうゴミケース(NAS運用においてです)が大量に存在します。前述のFreeNASサーバーはDefine R5という8台搭載可能ケースに5インチ2スロットを3.5インチ3スロットに変換する変態を搭載することでHDD10台搭載を実現していますので、最悪この手の変換でごまかせる程度にはケースの内容量が無いと困るわけですが。

そうして、カカクコムでケースを探します。3.5インチベイの最大数は10個までしか見当たりません。なんてことだ。(2020年11月23日現在の情報です) 
暗礁に乗り上げたところでふと思い出します。Define R6は11台載せられるよなと。つまり価格コムは使えないということが実証されたので、じゃあFractal Designのホームページで製品を探せば何かヤバいものでてくるのじゃないか と検討開始。

そうして見つけてしまったDefine 7 XLというケース。なんと最大で18台のHDDを搭載できるという。18台のHDD…… つまりSATAが18本必要ということです。

ちなみに、Define 7 XLの想定で始めていたのが、Meshify 2 XLが登場するということで「気分で」変更しました。Define 7 XLとMeshify 2 XLは姉妹機で、Define 7 XLが静音重視、Meshify 2 XLが冷却重視といった具合です。あとMeshify 2 XLのほうが2kg以上軽いです。重さは意外と大変なことになるので重要な項目です(検討外にしていたため、後で痛い目にあう)

SATAポートを何とかする

18ポート以上のSATAをサポートするマザーボードと聞いたら一発でASRock Z87 Extreme11/acが頭に出ました。この愛すべき? バカマザーは22ポートのSATAを搭載するという変態の極みなマザーなのです。

しかし今更第4世代のIntelCPUを載せる選択肢はないのでサクッとスルーです。となると…… そんなマザーボードの選択肢は実は存在しません。

Define 7 XLで14台のHDDを積んだ先駆者は「玄人志向 SATA3I10-PCIe」というSATA拡張カードを積んでいましたが…… PCIex2というポートサイズで10台のSATAを同時に読み書きできるかというとNO。帯域幅がGen3だとしても片方向2GB/s程度しかないため、HDDの同時シーケンシャルリードでも帯域が限界となります。

しかしここでへこたれていてはつまらない。面白い情報がありました。

SASカードの1ポートはSATA4ポートに分配できるというのです。そして、Amazonには怪しいSASカードと怪しいSAS-SATA変換ケーブルが多数……。

まあ、怪しいと言っていますが実はFreeNASのサーバーでも使っていて大丈夫と理解しているからこっち一択と知っていたのですが(笑)、うっかり真似する人のためにどの製品を買ったか教えておきます。

TrueNAS(新規)用はPCIEx8(3.0)接続な9207-8i SGL(https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0085FT2JC/)を導入。

FreeNASの方ではPCIEx8(Gen2.0)接続な9211-8i(https://www.amazon.co.jp/gp/product/B002RL8I7M/)を導入。

ちなみに人柱の方向けのとても安いSASカード(https://www.amazon.co.jp/dp/B01A7UDOSC/)もありますが…… 私は買ったこと無いので本当に知りませんよ?

さて、SASカードを導入することで18ポートのうち8ポートに目処が立ちました。残り10ポートです。現代のマザーボードでSATAポートの最大数は8です。標準的なATXの場合は6ポートです。4ポートならちょうど手持ちにあったPCIex1→SATA2ポートの拡張カード2枚で対応できそうなので、6ポートで十分という判断になりました。

鋼伝説

ASRockJapan(Twitter:@ASRockJ)の中の人原口氏が本社に提案した耐久性特化なマザーボード、Steel Legendシリーズ。どこかのYouTuberが格安電源で動かそうとして電源から出火するという大惨事に見舞われたあと、電源を交換しただけで平然と動いたという話もあるなど、耐久性は本当に高そうな一品。これ以上詳しい話は原口氏に聞いていただきたい()

とりあえず、こいつを主軸にするとサーバー用途に使う分には今現在サーバーグレードを除いて最優と判定した次第である。どうせいつもの24時間連続稼働マラソンなわけですが。(コンシューマ製品は基本この運用を想定していないことになっている

CPU戦争

マザーを決める際に重要になってくるのがCPU。Intel AMD戦争はここでも発生しそうですが、NAS用途の場合どう考えてもIntelです。Steel Legendを利用する前提で動きましょう。

第一にGPU内蔵CPUでないと駄目です。なぜならグラフィックカードが入るスロットはSASカードで埋まりますから。コンソール出力くらいのレベルであったとしてもGPU機能が必要です。(AMDのチップセットにG45くらいのゴミスペックでもGPUがあれば選択肢にはなった?)

そしてIntelとAMDで現在でも優位に立つアイドル時消費電力という項目がトドメになります。NASサーバーなんてものがいかに逸般の誤家庭で使うとはいってもそうそう連続負荷なんてかかりません。23時間は待機しています。アイドル時消費電力が高いということは、絶対性能が高かろうが最高性能時の消費電力が低かろうが完全に無駄です。同じ性能の車で方や最高速度で走るときの燃費が良くてもう片方が燃費劣悪だとしても、アイドリングストップ機能が搭載されているかいないかで逆転できるのです。

NAS運用は信号待ちが超長い空いている一般道の走行です。アイドリングストップがついていないに等しいAMDではいかに走っているときの燃費が良くてもトータルで劣悪な結果になります。

ということでIntelを選定します(異論がある方は実際に組んで見ればいいと思いますよ?)

(ちなみに、AMDはよからぬ不具合を踏みまくったので安定性にはおすすめできないというのも。ECCメモリが使えるのはメリットですが)

CPUとマザーボードを決める

CPUがIntel系ということで、一般マザーボードから選定すると、Z490, H470, B460, H410の4択となったわけですが、dedupユーザーは確定Z490です。というか、Z490でも足りません。メモリ128GB搭載したロマン砲をするならZ490、それ以外の場合、チップセット側PCIexレーン数の関係でB460以上を選択するべきでしょう。OCメモリを使いたい場合、Z490を選択しましょう。

今回は1スロット32GBのメモリのロマンをやるために、Z490を選択→ASRock Z490 Steel Legendとなりました。で、どうせZ490ならということで、CPUをK付きにしようと画策します。FreeNASの知見で第4世代Core i7でRAID計算をするとCPUがかなり逼迫することは知られていましたので、最低限Core i5搭載が内定していました(注:実際のところ、1Gbit Ethernetの上で動かす場合CPUは飾りでしかありませんが)。

今回は初期のH470の想定時にはCore i5-10400でいこうとしていたところ、気付いたらZ490+Core i7-10700Kというなぜそうなったとばかりの編成に。Core i7搭載NASサーバー。完全にオーバーキルです。

(実際のところ、CPU使用率を40%以上にするのが難しいです……)

CPUファンを選定する

ここまで来ると前世代でいうCore i9が乗ってしまったわけですから、発熱が心配です。Noctuaという選択肢もありましたがNH-U12Aの14cmファンモデルが出てこなかったので選択肢から外し、虎徹では心配でしたので超でかい無限五を搭載しました。

グリスはSMZ-02Sという耐久性重視のもの。サーバー用のグリスとしては多分最高性能ではないでしょうか。

メモリを決める

ここはあっさり「64GB載せましょう」という鶴の一声。というのもFreeNASでの知見で16GB程度だとZFSが大変な目にあっていそうなのです。容量が3倍になるということは3倍のメモリを要するという安直な考えのもと、64GBという数字になりました。後々OS論争で出てきますが、どうせWindows10+Hyper-Vだろということもあって余裕も必要だったからです。

HDDを18台用意する

最大の難所です。18台ものHDDを準備する必要があるというのは一般家庭ではありえない光景です。NASだからCMRでWestern Digital Red? いやいや破産しますよ?(あとSeagateは3TBのHDDのときに被害を受けたので選定対象外です)

CMRのHDDで6TBは2.5万円です。SMRのRed6TBも1.8万くらいします。Blueの6TBはSMRですが1万円です。圧倒的な安さです。(なぜ6TBなのかというと、WD Blueは6TBが最高コスパかつ最大容量なので)

何よりTrueNASのソフトウェアRAIDで2台まとめてぶっ飛んだところで大丈夫にするという前提から、HDDの故障率が上る可能性が高いBlueを選ぶことも別に問題にはならないのです。RAIDカードに適合したRed? ソフトウェアRAIDなので意味ないです。

ちなみに今回のHDD調達合戦ではNojimaが1万切り+ポイントバック連射というなかなかなことをしていたため、6TBを9500円で調達するというとんでもないコスパを達成できました。

電源周りをなんとかする

さて、HDD18台ということから次の問題は……電源です。SATA電源18本は最初から無理と分かっていますので(笑)、9本以上を二股で増幅するという方針が最も効率的ということで電源を選定します。

購入可能品はSeasonic(とそのOEM版)、Super Flower(とそのOEM版)に限りました。24時間365日動くようなマシンで安物を使ったら大事故不可避ですから。

色々と調べると、Super Flowerの750WのLEADEX III GOLD ARGB 750Wがちょうどよい出力でSATA電源が9本でしたので、こちらをチョイス。なんでLEDで光るやつのほうが9本で光らないのが8本なのかは理解できませんが

ちなみに、FreeNASの方は、SeasonicのFocus Plus Gold 750Wを搭載しており、現メインPCのSATA電源ケーブルをパクってSATA12本化しています。それが出来たら苦労はしない……

ちなみに、SATA電源2分岐のケーブルとして、こちらの変換名人SPR/2を購入しました。大人買いした結果、ヨドバシの在庫が枯渇しましたが私のせいだけではありません(笑)

冷却を検討する

今回のケースではHDDをガン積みする場合フロントファンからの吸気能力が高くなければ負圧系のエアフローになってしまうことが分かっていました。というより、HDDの冷却を考えるともうフロントは全力で吸気する必要がありました。

大人買い出来る勇者ならば、ここにNF-A12x25という1台4000円もする高額なファンをガン積みするという選択もありましたが、HDDで予算がカツカツになった私にはサイズのKAZE FLEX 2000rpm SU1225FD12H-RPがとても安価で良さそうに見えました。

……これが今回の一番の失敗ポイントで、PWM制御が出来ないものを買ってしまったため、フロントのファンが常時爆音を奏でることになってしまったのです。PWM制御用の4分岐ケーブルも買ったのですが…… これは大失敗。

追記:その後Wonder Snail 120に全部置き換えました。PWM使ってませんが。

ファンコンでも調整できず、NoctuaのLNAは燃えかける惨状でしたが、電子工作用のケーブルを利用してファンを直列接続するという荒業を実行してとりあえず静かに冷却できるようになりましたが…… いや、ホントこれ面倒くさかった。

構成のまとめ

超長くおまたせしました。自作PCパーツの一式をまとめました。こんなNASのハードウェアです。価格は購入した店舗の価格なので、変動があります。また、ポイント還元のためにストアの価格が高い場合も…… ご了承ください。

種類名称個数価格(計)
CPUIntel Core i7 10700K BOX143,799円
CPUクーラー Scythe SCNJ-5000(忍者五)15,698円
メモリG.Skill F4-3200C16D-64GTZN [DDR4 PC4-25600 32GB 2枚組]131,010円
M/BASRock Z490 Steel Legend120,994円
SSDW.D Blue SN550 WDS100T2B0C (PCIe3x4 M.2 1TB)112,799円
電源SUPERFLOWER LEADEX Ⅲ GOLD ARGB 750W(ATX 80+G P)114,118円
電源分岐ケーブル変換名人SPR/293,816円
SATA電源延長Owltech OWL-CBPU046 [SATA用電源延長ケーブル 30cm] 1371円
フロント冷却ファンScythe KAZE FLEX 2000rpm SU1225FD12H-RP43,084円
SASカードLSIロジック LSI00301 LSI SAS 9207-8i SGL112,290円
SASケーブルCableCreation Mini SAS (SFF-8087)オス to 4 SATA メス ケーブル 1m23,798円
ケースFractal Design Meshify 2 XL129,700円
HDDトレイFractal Design HDD Tray kit Type-B HDDトレイ2枚セット58,865円
SATAケーブル適当に70cmx2と50cmx6本4,000円(概算)
SATAカード玄人志向 SATA3I2-PCIe 25,520円
HDDWestern Digital Blue 6TB18190,000円(概算)
389,862円(概算)

恐ろしいことに39万円の自作PCの(半分はHDD代)というものが誕生しました。普通40万の自作PCを作ったときいたらGPUがすごそうと思うはず。その予算が全部HDDに振り切られているのがやばすぎるのですよね……

ちなみに、ケチりポイントはCore i7。Core i5-10400で十分ですので、ここはケチりましょう。メモリはケチらなくて良くて、もし今後この書類をアップデートするとすればメモリ関連なので(笑) Z490も今の所そのままにしておきます。

あと、SSDは250GBで十分でしょう。またSASカードも人柱用のカードで安く揃えるのもOKです。また、ケースもDefine 7 XLにすると少し安くなります。(重くなるけど)

といったケチりポイントをいじると36万で同じくらいの性能のNASが誕生します。
(本当は交換用のスロットが必要ということですが……忘れてた(笑))

これをどう動かすか…… 後編(ソフトウェア+まとめ編)に続く!

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